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南極からお便りが届きました

最終更新日
2025年03月12日
記事番号
P004007

吉岡町在住の気象庁職員の齋藤樹(たつき)さんが、第65次南極地域観測隊に選任され、現在南極の昭和基地で様々な活動を行っています。

このページでは、南極観測隊の概要などを紹介するとともに、齋藤さんからのお便りを掲載し、皆様に「南極での活動及び生活」をお届けしたいと思います。

各記事はこちらから

[No.1]昭和基地からお届けします(令和6年6月20日)

皆さま、初めまして。第65次南極地域観測隊(以下「第65次隊」)隊員の齋藤樹と申します。両親・祖父母が吉岡町出身で、ご縁がありこれから約半年間南極・昭和基地に関する連載をさせていただくことになりましたので、よろしくお願いいたします。

私は気象庁からの派遣で第65次隊では定常気象を担当します。気象庁からは5人の越冬隊員が通年で地上気象観測、高層気象観測、オゾン観測及び日射放射観測等を実施し、交代制で24時間365日昭和基地の大気現象を観測しています。

憧れだった南極・昭和基地に来て早くも半年が経過しようとしています。身近に現れるペンギン、雄大な南極大陸、水平線に広がる美しいオーロラなど、まるで映画の世界にいるようです。時として厳しい自然が我々を襲いますが、越冬隊27人で協力して生活しています。

昭和基地は6月初旬に極夜に入りました。南半球が冬になる位置に地球がくると、南極には太陽の光が全くあたりません。一日中太陽が昇らない日々が続いており、昼間でもわずかに空が明るくなるだけです。日本では味わえない不思議な感覚に戸惑いながらも、元気に過ごしています。

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昭和基地に現れたアデリーペンギンと自撮り(撮影:第65次隊・齋藤樹)

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2024年6月8日のオーロラ。昭和基地では晴れた日にしばしばオーロラを楽しむことができます
(撮影:第65次隊・齋藤樹)

[No.2]意外と知られていない南極・昭和基地の場所(令和6年8月20日)

皆さま、こんにちは。南極地域観測隊(略称:JARE(Japanese Antarctic Research Expedition))隊員の齋藤樹です。昭和基地では7月11日に極夜(太陽が終日昇らない状態)が明けて太陽が顔を出しました。約40日ぶりの太陽はあまりにも眩しく心に沁みました。やはり人間には日の光が必要ですね。私の祖父の名前は「光」、父は「光守」で叔父たちにも名前に光が入っています。亡き祖父は私の名前に「良光(よしみつ)」を勧めたそうですが、両親がこれを固辞。「樹(たつき)」になりました。

さて、話が脱線しましたが、本日は昭和基地の場所についてお話します。日本の南極の基地と言えば昭和基地を思い浮かべる方が多いと思いますが、実は南極大陸上にないことをご存じでしたか?この話をすると結構ビックリされることがあります。リュツォ・ホルム湾にある南極大陸から西に4キロほど離れた東オングル島という島の上に昭和基地はあるのです。天気の良い日に東オングル島の安全エリアをぐるっと一周するのが楽しみになっています。
また、8月11日には東オングル島と南極大陸の間の海の表面が凍った海氷上にコウテイペンギンが一羽現れ、野外活動チームが撮影に成功しました。可愛いですね~。

南極生活も折り返しを迎えましたが後半戦も元気に明るく、越冬隊の良い光になれるように日々を過ごしていきたいと思います。

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2024年2月13日撮影。写真奥の白い大地が南極大陸です。現在背後の海の表面は凍り、海氷となっています。
(撮影:JARE65・齋藤樹)

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2024年8月11日撮影。コウテイペンギンのサイズは90cmほどだったそうです。
(撮影:JARE65・津町直人)

[No.3]昭和基地でのおしごと(令和6年12月22日)

皆さま、こんにちは。南極地域観測隊(略称:JARE(Japanese Antarctic Research Expedition))隊員の齋藤樹です。本日は南極・昭和基地で働く気象隊員のおしごとを紹介します。私たち気象隊員は日勤、夜勤、気球を揚げる当番があります。日勤や夜勤は24時間体制で天気、雲の形、見通しの距離を目で見て記録し、雪や吹雪などの気象現象を10分単位で観測します。また、一日に二回の気球を揚げる当番では、大きなゴム気球にGPSゾンデといわれる小型の気象観測器を取り付け放球することで、地上から上空約30kmまでの大気を観測します。これらの観測データはリアルタイムで全世界に発信され、広く研究や天気予報に使われています。南極は非常に寒いので日本国内では発生しないようなトラブルがしばしば起こります。そういったトラブル対応や観測データの品質管理も常時行っており、忙しい日々を過ごしています。

また、当番の日以外は昭和基地の建物の掃除をしたり、雪かきをしたり他部門の隊員のお手伝いをしたりします。越冬隊は27人という少ない人数ですのでお互い助け合って仕事や生活をしています。思いやりの心や優しい気持ちがなによりも大事です。

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2024年11月10日撮影。ヘリウムガスカードルに取り付ける集合管をメンテナンスしている様子。
(撮影:JARE65・佐藤祥平)

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2024年9月14日撮影。観測前にゴム気球と観測機器を取り付ける気象隊員の様子。天気は良いですが気温はマイナス30°C近くであったため大変な作業です。(撮影:JARE65・齋藤樹)

[No.4]夏の昭和基地(令和7年2月18日)

皆さま、こんにちは。南極地域観測隊(略称:JARE(Japanese Antarctic Research Expedition))隊員の齋藤樹です。今回は1月に行われた昭和基地での夏作業や引継作業の様子をご紹介します。2024年12月28日に66次南極地域観測隊本隊が昭和基地へ到着しました。昭和基地は1月が最も忙しくなります。昭和基地で使用する燃料・食料・大きな荷物などを「しらせ」から運ぶ「輸送作業」、昭和基地内で新しい建物を建てる「建設作業」、各研究者が観測機器を設置し観測データを収集する「観測作業」、そして業務や基地の維持管理を確実に行うために65次隊から66次隊への「引き継ぎ作業」などがあります。私も日々の観測業務と並行して輸送作業を実施し、空いた時間で66次隊への引き継ぎ作業を行いました。隊員同士協力し合い、無事に全ての作業を終えることができて、ホッとしています。

忙しい日々でしたが時間を見つけてバーでお酒を飲んだり、東オングル島内を散歩したりして最後の思い出を作りました。また、ヘリコプターでの研修フライトでは南極の秘境・ルンドボークスヘッタにも足を運ぶことができ、一生の思い出を作ることができました。

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2025年1月11日撮影。フォークリフトを運転する津町隊員(中央)と誘導する清水隊員(右)・寺崎隊員(左)。(撮影:JARE65・齋藤樹)

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2025年1月22日撮影。秘境ルンドボークスヘッタで記念撮影。南極大陸沿岸の露岩帯にあるこの大きな湖はこの世の果てと言っても過言ではないでしょう(撮影:JARE65・津町直人)

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2025年1月29日撮影。昭和基地がある東オングル島の名所「胎内岩」で記念撮影。久々の散歩は素敵な景色と楽しいトークで盛り上がりました(撮影:JARE65・齋藤樹)

[No.5]越冬交代を終えて(令和7年2月19日)

皆さま、こんにちは。南極地域観測隊(略称:JARE(Japanese Antarctic Research Expedition))隊員の齋藤樹です。2025年2月1日をもって私たち第65次南極地域観測隊越冬隊は全ての業務を終えて第66次南極地域観測隊越冬隊へ引き継ぎました。今はオーストラリアに向かう、「しらせ」の船内で原稿を書いています。

大学4年次に気象庁のパンフレットを見て南極で活動する気象隊員の姿が目に留まりました。当時は警察庁が第一希望でしたが、「これだ!」とビビビッときた結果、気象庁に入庁しました。完全に勢いで人生の方向が決まりました。日本各地を転々とし観測スキルを磨いた後、現在に至ります。

この1年間は夢のような時間でした。写真・動画や観測値でしか知らなかった現象は目の前にすると圧巻です。南極の自然の美しさも厳しさも全身で体感し体験することが出来ました。気の良い仲間たちと共に笑い合って過ごしました。

この越冬生活で感じたことは「全ては自分の気持ち次第」ということです。同じ昭和基地でも、季節や時間によって空気も色合いも移り変わっていきます。その時その場所にいる自分の気持ちひとつで、見えてくる世界も周りの景色も変わっていくのです。カメラが無くても心のフィルムに焼き付けることはできます。この素敵な空気を胸いっぱいに閉じ込めて日本へ帰りたいと思います。

帰国後は気象庁で天気予報や防災の仕事に従事し、南極の魅力を伝える活動をしていきます。吉岡町のみなさんにも機会があれば直接お話できれば嬉しく思いますので、その時はよろしくお願いしますね。

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2025年2月1日撮影。越冬交代後に第65次南極地域観測隊越冬隊全員で記念撮影をしました。
(撮影:JARE66・北本憲央)

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2024年7月2日撮影。昭和基地から各地への距離を示す看板で、昭和基地から東京までは約14,000km離れています。(撮影:JARE65・齋藤樹)

南極地域観測隊とは?

日本の南極観測は、1957年に始まりました。昭和基地をベースに、オーロラの観測や厚い氷床の掘削、鉱物の調査や隕石の発見、動植物の調査など、幅広い活動をしています。

観測を行うのは、夏の間3ヶ月間南極に滞在する夏隊と、1年を通して南極に滞在する越冬隊です。毎年11月、砕氷船「しらせ」で日本を出発。12月に南極に到着し、短い夏の間にさまざまな仕事をします。2月1日に前の越冬隊と交代式を行い、越冬を終えた隊員と、夏隊を乗せた「しらせ」は、2月上旬に南極を出発、3月下旬日本に到着します。(環境省HPより)

齋藤さんは、第65次隊の越冬隊において基本観測における定常観測で、気象を担当されています。

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